『 お手をどうぞ ― (2) ― 』
「 ・・・ 」
ジョーは息を詰めて 返事を待った。
い 言ったぞ!
ホントは ず〜〜っと撮りたいんだ !
きみが 踊ってるとこ。
― 知ってる?
きみ 踊るとさ、金色の光の粒が散るんだ
うん ぼくには見える。
光の中で踊ってるきみ ・・・
ああ
・・・ 撮りたい !
「 あ ・・・ 」
フランソワーズの笑顔が す・・・っと曇った。
「 !? ご ごめん ・・・
な なんか悪いこと、言った?
そのう・・・ 気を悪くしないでくれよ 」
冷たい汗が 彼の背中を転げ落ちる。
「 あの ・・・ すごくキレイだなあ〜〜って。
だから 是非 撮ってみたいんだ 」
ジョーは かなり必死になって言葉を継いでいる。
「 だから そのう〜〜〜 」
ああ ・・・・ !
バカバカ〜〜〜〜
ぼくってどうしてこう無神経なんだろ?
おろおろする彼に フランソワーズはゆっくりと笑顔に戻った。
「 ジョー。
」
いつもと同じ声音で 彼女が口を開いた。
「 ・・・ あ ? 」
「 ごめんなさい、 なにか気を使わせてしまったわね ・・・ 」
「 え? え それは ぼくが ・・・ 」
「 ジョーが写真撮りたいって 言ってくれて すごく嬉しい! 」
「 ・・・ え そ そう??? 」
「 ええ ものすごく嬉しいわ! 」
「 そ そうなんだ?? 」
「 ええ。 だけど ね。 まだ ダメだわ わたし。 」
「 ・・・ え ・・・? 」
「 わたし、まだジョーに撮ってもらえる踊りが できてないの。
もっといい踊りができるようになったら 撮ってください。 」
「 ! う うん! 必ず!!! 」
「 ありがと その日を目標に 頑張ります! 」
「 ・・・ そっか ・・・
あ。 あのう・・・ ひとつ、聞いても いいかな 」
「 なあに 」
「 ・・・ これこそ気を悪くしちゃうかもしれないけど・・・
あのさ サイボーグであることって プラス?
そのう きみが踊ってゆく時に さ 」
ジョーは かなり慎重に言葉を選んだ。
「 え? あ〜〜 そのこと・・・
わたし 日常は全てoffにしてるのね。
それに 踊ることに 特殊なチカラ は必要ないわ。 」
「 そ そうなんだ? 」
「 そうねえ サイボーグでよかった・・・・って・・・?
まあ 足の皮がカンタンには剥けないこと、くらいかしら 」
くすくすくす・・・ 彼女はごく自然にかるく笑う。
へ え ・・・
気にしてないんだ ね
ああ いい笑顔だあなあ
「 あんまり気を使わないでね? 」
「 あ うん ・・・ でも 」
「 そうね〜 はっきりいえば サイボーグの能力 なんて
ジャマだわ。 」
「 邪魔??? 」
「 そ。 踊ることにまったく不要よ!
邪魔なだけ。 だから完全にoffにしているの。 」
「 そ そうなんだ?
あ でも ジャンプとか・・・・ 」
「 ニンゲン離れした高さで跳んでどうするの?
高さや滞空時間を競っているんじゃないわ。 」
「 ・・・ あ そうか 」
「 ジャンプの高さや 回転の回数を競うんだったら
それはスポーツでしょう?
バレエは芸術よ 音楽と共に表現するが踊りなのよ。 」
「 そっか ・・・ それじゃ きみは 」
「 ええ まったくニンゲンのチカラだけ で踊っているわ。
それにねえ ・・・ 困ることもあるの。 」
ふふ・・・ フランソワーズは少し苦い笑みを漏らす。
「 なに 」
「 うん ・・・ 体重 よ。 」
「 体重 ? きみ 細いじゃないか 」
「 ジョー。 わたし達の身体には 機械 が入っているのよ?
どうしたって普通のヒトよりも ・・・ 重いわ 」
「 ・・・ それは ・・・ 」
「 それにね どんなにダイエットしても レッスンをふやしても
・・・ 体重を落とすことは 不可能だわ 」
「 ・・・ うん 」
「 パ・ド・ドウを踊る時は やっぱり軽い方がいいの。
でも ・・・ わたしには出来ない でしょ ・・ 」
「 そう だね ・・・
イヤなこと、聞いてごめん ・・・」
「 あなたが謝ることじゃないでしょ?
そりゃ 最初は悩んだわ 泣いたわ わたし。
でもね 泣いてもどうしようもないもの。
踊れるだけで ― 幸せよ 」
「 ・・・ そっか ・・・
フラン ・・・ きみって すごい! 」
「 やあだあ〜〜 そんな風に言わないで?
やりたいって思ったことを やっているだけ。
・・・ でもね それってすごく幸せなことじゃない? 」
「 そうだね いろいろ・・・ あるもんね 」
「 誰だって やりたいことが出来るわけじゃない。
だけど 今、 目の前にチャンスがあるのよ。
だから わたし 出来るだけのことをするの。
そのためには 玄関でだって練習するわ 」
ああ なんて キレイなんだ・・・
彼女は 頬を少し上気させ 瞳を活き活きと輝かせている。
彼は そんな彼女から目を離すことができない。
「 すご ・・・ いよ フラン ・・・ 」
「 えへへ ・・・ 諦めが悪いのかもね、わたしって。 」
「 そんなこと ない! 頑張ってるフランって
最高にステキだ。 」
「 ありがと、ジョー。 ジョーにそう言ってもらえると
勇気が出るわ。 また 明日も頑張ろうって 」
「 うんうん ! ねえ 立ってるだけでもいいなら
ぼく、使って。 へへ・・・ 少々のことじゃビクともしないさ 」
「 きゃ〜〜 頼もしいのね!
あ でも ジョーも仕事、あるでしょう?
取材が忙しいんじゃない? ジョーだって自分が目指すことに
集中しなくちゃ ね 」
「 あ ・・・ う うん ・・・ 」
「 いつか ・・・ ジョーの作品集とか見たいわあ
それでもって。 わたしがもっと上手になって
舞台でソロを貰えるようになったら 撮ってください 」
「 ん。 ぼくも 腕を磨いておく。 」
そうさ。
金の光の中で舞うきみを
最高に 美しく撮れるカメラマンに!
「 じゃあ 競争ね〜〜 ふふふ 負けないわよ〜〜 」
「 負けない ぼくも。 負けたくない 」
「 わたし ずるいかもしれない ・・・ 」
「 え どういうこと 」
だって ・・・ と 彼女は改築した部屋を見回す。
「 こんなステキな場所・・・ 自分だけのレッスン室!
夢みたい・・・ なんだもの。 」
「 気に入ってくれたんだね 」
「 ものすご〜〜〜〜く!!!
えっと ・・・ なんていうの めっちゃ・く〜る? 」
「 サンキュ。 えへへ ぼくもすごく嬉しい
床材とかいろいろ・・・ 探したりするの、すごく楽しかったもん 」
「 やっぱり男の子は いろいろ作るの、好きよね 」
「 そっかな〜〜 」
「 わたしの兄さんもね、ちっちゃい頃 小鳥の巣箱とか
作ってたわ 」
「 へえ ・・・ 」
「 鳥さんに気に入ってもらえたかどうかは わからないけど 」
「 う〜〜ん どうだろうね? 」
「 ・・・ あの わたし。 頑張りマス。 本気です 」
ぺこり ― フランソワーズは深くお辞儀をした。
「 あ ・・・ はい 頑張ってください。
ぼくも ― がんばります 」
ジョーも ぺこり。 身体を折ってお辞儀をした。
― その夜
パタン。 ジョーはファイルを閉じた。
「 ・・・・・・ 」
カタ。 隣に置いていたタブレットも 閉じた。
ぼく は。 なにをやってる??
彼は アタマを抱え机に突っ伏した。
今晩、博士と三人で 穏やかな晩御飯の時間を過ごした。
ジョーも手伝いをしたチキンのトマト煮 はとても美味しかった。
一緒に煮込んだ玉ねぎやらじゃがいもの味を楽しみ、
チキンも柔らかくいい味に仕上がっていた。
「 ほう〜〜 いい味じゃなあ フランソワーズ、
料理の腕を上げたのう 」
「 ふふふ 博士〜〜 これはほとんどジョーの作品なんです。
ほっんと 美味しい・・・ 」
「 え あ ぼくはフランのいう通りにやっただけで・・・ 」
「 それにね〜 このサラダ。 お豆腐を使うって
ジョ―が教えてくれたんです。 あ〜〜 美味しい♪ 」
「 あ は ぼくが食べたかったんで・・・ 」
「 そうか そうか みんな 美味いなあ 」
チキンの味やら サラダを楽しみ、 おしゃべりも楽しんだ。
はああ ・・・ いい感じだなあ〜
― うん ・・・
これが かぞく って気分☆
ようし。
データの整理して 次の作品の構想、きめよっと。
フランに負けないもんな〜〜
カメラマン・島村ジョー の代表作品を撮るんだ!
ジョ―は お腹も心も満足〜〜 で 仕事部屋に入ったのだった が。
撮りためた作品を見返すうちに 彼の顔色はす・・・っと色を失ってゆく。
「 ! ・・・ これも これも。 ああ これも!
オンライン上の評価ってなんだ??
そんなものに ぼくは ― いい気になってた ・・・のか!? 」
カチ カチ カチ !
キーボードを押す指が 自分自身への怒りで震えてきた。
いや 怒り ではない、情けなさ だろう。
「 ・・・ こんなのに ぼくは ! 満足してた のか??
ぼくが撮ったんじゃない! これは ― 009 が撮ったんだ。
そりゃそうさ・・・ ドローンが撮った写真は
ニンゲン離れして迫力があるさ。 けど それっきりじゃないか!
機械が自動に ぱしゃり とスイッチが入っただけ だ 」
バサ。 乱暴に印刷した作品の束を伏せた。
「 なにがカメラマン志望 だよ・・・! よく言うよな〜〜
フランは フラン自身のチカラだけで 頑張ってるじゃん。
なのに ・・・ !
ぼくは ― ったく !!! 」
今まで ジョーはキワモノ的な 題材ばかり狙っていた。
身に備わった特殊な能力を使って確かに迫力のある写真を
数多く撮ってきた。
すごい〜〜〜 決死の撮影! 命知らず・カメラマン〜〜
ネット上では そんな賛辞が飛び交った。
いいね! の山に ジョー自身、嬉しかったしわくわくした。
「 うわああ〜〜〜 こんなに ・・・
ようし 次はもっとレアな場所 撮ってやる〜〜 」
ジョーは夢中になっていた ― 初めて自分の < 能力 > を
闘い以外で世間から認められた・・・と 勘違いしていたのかもしれない。
だが。 それは全て サイボーグのチカラ を利用したものなのだ。
島村ジョー ではなく 009が撮ったものだ。
お前 最低だよっ 島村ジョー !
ちょっと騒がれたからって いい気になって・・・
ふん サイボーグ009 として発表すればいい。
・・・ だけど。 けど。
なんかさ 初めて褒めてもらえて
すごい〜〜って 言ってもらえて
・・・ 嬉しかったんだ ・・・
「 ・・・・ 」
彼は唇を噛み ゆっくりと身を起こす。
泣いていたって 嘆いていたって 仕方ないのだ。
「 ・・・ フランは 自分自身の脚で立ち上がったじゃないか!
ぼくは。 ― 負けられらない。 いや 負けたく ない。 」
ぼくは どうしたら いい?
・・・ ぼくの目指すべき方向は どこなんだ ・・・! 」
島村君。 急いでいるなあ
不意に ササキ先生の、彼が密かに師と仰ぐヒトの言葉が思い出された。
取材中、何気なく言われた一言で その時は意味はよくわからなかった。
「 ・・・ はあ ・・・ 」
「 ま 若いうちは な。 」
「 ・・・ はあ 」
それきり 師はハナシを換えてしまい ジョーもあまり気に留めては
いなかったのだ。
しかし。 今 ― その本当の意味がじわ〜〜〜っと心を責める。
ぼくは ― なにを撮ったらいい ・・・?
なにを撮れば どう撮れば いいんだ
彼女が 最高に輝く瞬間を撮る?
・・・ ぼくにそんな技量が あるか?
またまた ふか〜〜いため息が噴出してしまう。
「 こんなんじゃ ・・・ 仕事の写真だってすぐに飽きられる。
キワ物ばっかじゃ ヒトのココロに残らないよなあ ・・・ 」
ジョーは 愛用のカメラを手元に引き寄せ
フランネルの布で磨き始めた。
お前 ・・・ 今までのぼくに呆れてたんじゃないかい?
・・・ ごめんな。
もっと丁寧に扱わないと 嫌われちゃうね
丁寧に ゆっくり さ。
・・・ ゆっくり ・・・?
ジョーは カメラと両手に持ったまま はっと顔を上げた。
・・・ そっか ・・・
なにを いそぐ必要が ある???
― ぼくには たっぷり時間があるんだ!
じっくり腰を据えて 時間 とやらを
見送ってやろうじゃないか
彼はそのまま愛用のカメラを 目線の高さまで持ち上げた。
「 あらためて よろしく頼む。
うん きっと長い付き合いになると思うから
― ぼくの相棒くん。 」
きゅ。 ジョーは 相棒の感触を改めて確かめていた。
コトコト カチャ・・・ ことん。
ジョーは でっかいお握りをラップの上に置いた。
「 ・・・っと。 これでいっかな〜〜
ふっふっふ〜〜〜 弁当は豪華お握りだあ〜〜 」
早朝のキッチンで 彼はかなり盛り上がっている。
調理台は ごたごた・・・いろいろなものがならんでいる。
「 えっと ・・・ こっちは少し小さめ。
こっちは皿に置いて っと。 」
かなり手際よく作業を進めてゆく。
「 ふんふ〜ん ・・・ さて コーヒーでもいれるかあ 」
トントントン ・・・ 軽い足音が降りてきた。
キッチンのドアが静かに開き 金色のアタマが入ってきて・・・
「 ? あら。 おはよう〜〜 ジョー。 はやいのね?? 」
「 フラン〜〜 おはよう〜〜 えへへ ・・・
あのさ。 これ。 今日の弁当にもっていってくれる? 」
彼は チェックのクロスの包を差し出した。
「 えええ?? お お弁当?? ジョーが 作ったの 」
「 うん! あの お握りだけなんだけど ・・・ いい? 」
「 いい いい! うわあ〜〜〜 嬉しい!
わたしね〜 最近 おにぎり にハマってるのよ〜〜
コンビニでいろんなの 試してるわ 」
「 あは コンビニのとはちょい違うけど・・・
お握りは ぼくの唯一自慢の料理なんだ、 どぞ! 」
「 わあ〜〜〜ありがとう〜〜 ジョーの手作りお弁当ね♪
嬉しいわぁ〜〜
」
フランソワーズは その包を胸に抱いてにこにこだ。
「 博士のね お昼にも作っておいたんだ。 」
彼は 調理台の皿を指した。
「 まあ 博士、喜ばれるわ〜〜 最近和食党んですって
すごいわ ジョー 」
「 えへへへ・・・ 実はね 自分の弁当、作ったんでさ 」
「 あら お弁当、いるなら作るわよ?
あのね 朝ご飯と一緒に ちゃちゃちゃって作っちゃうから
遠慮しないでね 」
「 ありがとう〜 きみのサンドイッチ めっちゃ美味いよ〜〜
大好きさ! 」
「 嬉しいわ わたしもね ジョーのリクエストで作った
オムレツ・サンド 気に入ってるの。
あら どこか出掛けるの? お仕事・・・? 」
「 取材に行くんだ。 ずっと野外の予定なんで ・・・
がっつり弁当つくったのさ。 」
「 野外? ・・・ また 危ないトコ ゆくの? 」
「 ううん。 アレは ・・・ やめた。 」
「 そう よかった・・・!
あのね・・・ 評判いいのは知ってるわ でも ・・・
やっぱり危険なトコでの撮影 やめてほしいの。 」
「 ん。 もうやらない。
じっくりゆっくり ― 自分と向き合ってゆくよ 」
「 へえ なんかすご〜〜い 」
「 すごくなんかない やっと気が付いたっていうか
・・・ フラン、 きみを見ててわかったんだ。 」
「 ? わたし?? 」
「 そ。 きみは きみ自身のチカラで 頑張ってるだろ 」
「 え ・・・ ええ だってそれしか 」
「 そういうこと! サンキュ フラン〜 」
「 え〜 わかんないわあ ねえ 説明してよ 」
「 ん〜〜〜んん 言わないよ〜〜ん♪
特製お握り弁当 を たべて 頑張ってくださ〜〜い 」
「 え ええ ・・・ 」
彼女は 腕の中の弁当の包みを見つめた。
「 なんか 温かいわね 」
「 あは 出来たてだから ・・・ 」
「 それもあるけど ・・・ お手製だもん。 」
す・・・。 フランソワーズは右手を差し出した。
「 ジョー。 どうぞ 手を。 」
「 へ??? 」
「 あの ね。 手 ・・・ 出してくれますか
ふふふ お手をどうぞ? 」
「 う うん ・・・ いいけど・・・ 」
「 この手で 温かい写真、 撮ってね。
あったかいお弁当を作ってくれた手 ・・・ なんでも出来るわ! 」
きゅ。 白い手が 彼の手を包みこんだ。
「 ありがと・・・! フラン。
フラン、 お手をどうぞ。 」
「 え うふふ? 」
ぽわ。 大きな手が 彼女の手を取った。
「 ぼくがいつだって控えてるから。
飛んで・・・ 自由に飛んでいって! なんでも踊れるよ 」
「 ジョー! メルシ・・・ 」
朝陽の中で ジョーとフランソワーズは ほわほわと
手を重ねあった。
なんだって 撮れる!
なんでも踊れるわ!
フランソワーズは 地味だが堅実に練習を重ねた。
着実に 彼女はスキルを上げていた。
次の舞台のパートナー、金髪のゲスト氏とリハーサル中だ。
「 〜〜〜 あ そう この感じ〜〜 」
トン。 男性はゆっくりとフランソワーズを床に降ろした。
「 フランソワーズさん 君 リハの度によくなるなあ
なんかさ、どんどん軽く感じるんだ 」
「 え ありがとうございます! 」
「 ダイエット・・・したって風でもないけど・・・? 」
「 はい。 貴方のタイミング わかりましたから
わたし 本当は重いんですよ〜 」
「 え そうかなあ? だけど いいなあ〜
君の踊り方、すごくいい。 なあ 君 さ、ウチのカンパニーにこない?
僕が推薦するよ! 」
彼は魅惑的に笑いかける。
彼女も満面の笑みで応えた。
「 ありがとうございます。
あの わたし ここがいいんです、 日本が好き ! 」
ジョー ! 最高のわたしを 撮って!
さて ジョーも時間がある限り あちこちへ取材、というか
撮影修業? に出掛けていた。
地下の < アトリエ > で現像しまくり これじゃない、と
破り捨てたり試行錯誤を重ねていた。
彼が師匠と仰ぐ ササキ氏 の助手として取材に同行した時のこと・・・
「 ― 君 かわったね? 」
歩きつつ ササキ氏は唐突に言った。
「 へ?? 」
「 君の作品さ 」
「 ・・・ あ はあ まあ 」
「 これ いい。 この前、編集部で見つけたよ 」
氏は 一枚の写真をフォルダーの中から取りだした。
「 ・・・ え それ。 あの まだ習作で ・・・ 」
「 時間の流れを 感じる。 優しい目線だね いいよ。 」
「 そ そうですか!! 」
「 こういう方向が 君に合ってると思うが 」
「 ・・・ はい!!! ありがとうございます!! 」
「 これ もらってもいいかな
次の展示会に 出したい。 いいかい 」
「 はい!! ありがとうございます!!
それは ―
ガラス屋の店先で。 店番のおばあちゃんの脇の三毛猫が丸くなっている。
側のガラス戸に 澄んだ青い空と枝に残った柿の実が映っていた。
その後 彼の活動は季節の巡りをゆっくり追う作品へ 移ってゆくのだった。
フランソワーズ! きみを撮れる準備ができたよ!
************************* Fin.
**************************
Last updated : 11,24,2020.
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************ ひと言 **********
ポジティブなフランちゃんと書きたくて・・・
ジョー君は きっと彼女に相応しい存在になろうと
生涯がんばるのでしょうね ・・・
短くて ごめんなさい ・・・・